「短歌DJ」を久々にやってみた
先日、牛隆佑さんの「借り家歌会」に行きました。
借り家歌会は月2回行われているにも関わらず、毎回大盛況で、この歌会を定期的に続けている牛さんはマジですごいな…と思いつつ時々参加しています。
当日の大阪は大雨で、久しぶりにとても人数の少ない会でした。
通常の歌会が終わってから時間が余ったので、私が過去に思いついた「短歌DJ」をやらせていただきました。
短歌DJとは、歌集や短歌の本を使って気軽にできる遊びです。
参加者の一人を「リスナー」役として、その人のオーダーに合う短歌を他の人は歌集の中から探す、という内容です。
詳しくは↓
借り家歌会の会場は「まちライブラリー@大阪府立大学」で、短歌の本がたくさん置かれているので、今回はそこから1人2冊本を選びました。
『トントングラム』伊舎堂仁
『つむじ風、ここにあります』木下龍也
のような新鋭短歌シリーズや、
『セーラー服の歌人 鳥居』(鳥居さんの歌集は『キリンの子』ですが本棚に無かったので)
など比較的最近のものや、俵万智さんの歌集、塚本邦雄さんの歌集なども。
また、短歌が載っていれば歌集である必要もないので、
『ユリイカ 2016年8月号 特集=あたらしい短歌、ここにあります』なども交えて行いました。
まず、私が「リスナー」役で、「暗い歌」をオーダーしました。
いろいろ暗い歌があがったなかで選んだのがこれでした。
この時間なら窓を見ているわたしだが入院したらミヤネ屋を見る/斉藤斎藤
これは『ユリイカ 2016年8月号 特集=あたらしい短歌、ここにあります』に収録されていた斉藤斎藤さんの「ミヤネ屋を見る」という連作の一首です。
この本、私も持ってたのに、ちゃんと読めてなかったんですよね。でもこの歌だけじゃなくて、この連作がめちゃくちゃよくて、「帰って読み返さないと…」って思いました。
この企画の面白いのはそういうとこで、自分が普通に読んでたら見逃す歌も、お題によっては光るし、それによって歌を見返すと、見つけ損ねていたいい歌が見つかったりするんですよね。
次はリスナーが変わって、オーダーが「疲労感のある歌」
選ばれたのがこの歌
泣き疲れ夕暮れになる日曜日ペットボトルの無色溢れる/鳥居
掲載されていたのは『セーラー服の歌人 鳥居』。
選んだのが私だったんですが、この本も読んでたのに見逃してた歌でした。めちゃくちゃいい歌やのになぜ見逃してたのか…。
「泣き疲れ」の涙のイメージと、「ペットボトルの無色溢れる」の呼応している感じが良いですね…「溢れる」って漢字もなんか感情が収まりきらなくてあふれてる感じが出てるようにも見えるし。
次のオーダーが「おいしそうな歌」
私が持っていたのが、『つむじ風、ここにあります』『セーラー服の歌人 鳥居』だったので、「負けた」と思いました。あんまりおいしそうな歌がない、という印象で、実際料理自体が出てくる歌が少なかったです。
ここで選ばれたのは俵万智さんでした。
トンカツにソースをじゃぶとかけている運命線の深き右手で/俵万智
このお題でわかったのは、俵万智の短歌めちゃくちゃご飯が出てくる!、しかも揚げ物がめちゃくちゃ出てくる! という話でした。
お題に沿って歌集を見ると、この歌集は「暗い歌が多い」「おいしそうな歌がない」とかいろいろ気づきがあります。「〜〜な歌が多い」という感覚は普通の感覚なんですけど、「〜〜な歌が無い」っていうのはわざわざ感じないかなと思います。
でも、本当は「〜〜な歌が無い」のもアイデンティティな気がしてきました。
私の歌集に九条しょーこさんが書評を書いてくれた時、「なべとさんの歌には珍しくひとが出てくる」という文章があって、自覚はなかったけど、そう言われて読むと、私の歌には極端に「ひとが出てこない」。
「ない」ことも、ひとつの歌集の性格なんでしょうね。
他にも
オーダー「色のある歌」
ドアマンの目はガラス色この星にいま降り立ったかのような顔/木下龍也
オーダー「寝る前に思い出したい歌」
などありました。
(オーダーと作者ちゃんとメモしてなかったので、何個か抜けてます)
ただ、一個強烈なやつがあったんで、これだけは紹介しときたいです。
お題が「アホ」な歌でした。
iPhone谷間に挟めばパイフォーン着信音に胸ときめいて/木下古栗
これも、『ユリイカ 2016年8月号 特集=あたらしい短歌、ここにあります』より。お題が「アホ」でこれ見つかったのでめちゃくちゃ笑いました。
短歌DJ、何人かで歌集を持ち寄ってやると楽しいと思います!
途中で歌集をシャッフルすると、読んだことのない歌集のいい歌も発見できるので楽しいです。
ぜひ遊んでみてください!
私の歌集も使ってください。↓