なべとびすこのなすべきこと

やってみたいをやってみよう。短歌を中心にいろんなことをやっている歌人のブログ。

2019年に読んで良かった本まとめ

毎年年末に1年間で読んだ本のランキングを発表してたんですが、気づいたら1月も半分過ぎてしまいました。

今更ながらあけましておめでとうございます。

 

2019年が懐かしくなってしまう前に、2019年に読んだ好きな本をまとめておきます(2019年に私が読んだだけで、発売日は全く関係ありません)。

 


『ナナメの夕暮れ』若林正恭


去年の1位が滝沢カレンで今年はオードリーの若林のエッセイが1位です。

これまでも堺雅人星野源などのエッセイが上位で、結局私はタレントエッセイが基本的に好きなんです。

 


それにしても、若林さんのこのエッセイはめちゃくちゃ良かったですね。

若い頃尖っていて、物事をナナメから見て冷笑していた頃から、おじさんになって丸くなって、少しずつ人生を肯定できるようになるまでの過程が描かれています。


若い頃の冷笑的な価値観だけなら、ほかのエッセイでもよく見るような感じだし、完全におじさんの価値観になった人の自己啓発本も世の中にあるんでしょうけど、この本はその中間だからこそ良いんだろうなと思います。


私も永遠に中二病みたいなものが一生治らないと思ってたのに、最近少しずつ変わってきた感じがしてきていて、でもその変わった自分にまだ違和感もあるっていう中途半端な時期だったのでめちゃくちゃ響いてしまいました。


若林さんのほうが私より10歳以上年上なんですが、私はこのまま歳を重ねても大丈夫そうかも、と思えた本でした。


自分の世界は大切にしながら、でもそれは誰かと比べてなんとか自分を保つような方法じゃなくて、少しずつ好きなことを増やして、好きなことが存在するこの世界を肯定していけばいいんだと思います。

 

 

コンビニ人間村田沙耶香


散々話題になってた小説を今さらながら読みました。

村田沙耶香さんを初めて知ったのは、私が西加奈子さんのトークイベントに行きまくっていた頃で、西さんがいつも村田沙耶香さんのことを「小説界の宝」って言ってベタ褒めしてたんですよね。


本人は可愛いのにクレイジーなところもあって、世界で1番が1番気持ち悪いと思っていて、早く普通の人間になりたいらしい、みたいなことを西さんが言ってました。

それを聞いてから、数年前に『しろいろの街と、その骨の体温と』を読んで、たしかにすごいし、狂ってるけど、ちょっとしんどいな…っていうのが本音でした。しんどい本好きやから良いんですけど。


そのあと『殺人出産』を読んで、5人産めば1人殺せる、というヤバイ設定

で、これはめちゃくちゃ面白かったです。

でも、設定のヤバさがあるからか、村田沙耶香さん自体が持ってる狂気はそこまで感じられなかった気もしてたんです。

そういう意味で『コンビニ人間』は村田沙耶香自身の狂気みたいなものをめちゃくちゃ感じたし、面白かったです。


主人公はただコンビニで働いているだけ。

正社員として就職せず、結婚せず、コンビニのアルバイトを本気でやっているだけ。

誰も殺さない、誰も傷つけていない、何も間違っていないはずなのになんか狂ってる。

主人公の言い分はめちゃくちゃなようで筋が通っているし、狂っているのは世界のほうなんじゃないかとまで思う。

それでも、もし身近にいれば少し距離を置いてしまいそうな気もして、自分の思想の曖昧さにも気付かされる。


コンビニ人間を描くだいぶ前のテレビのインタビューをたまたま録画していて、今さら見た。

「コンビニで働いてたら嫌な客とかいませんか?」って言われて「それも愛するのがコンビニ店員だから」

って言ってて、この人たぶん本気で言ってるんだなと思いました。

 

 

『みらいめがね』荻上チキ


友人が誕生日にくれた本ですが、めちゃくちゃ良かったです。

自分が気づかないうちにかかっている「呪い」を解くための方法が少しわかったような気がします。

ディズニーで描かれている女性像の変化の話なんかは特に面白かったし、腑に落ちる話が非常に多かったです。

 

『だから片づかない。なのに時間がない。「だらしない自分」を変える7つのステップ』マリリン・ポール


普段なら絶対読まないタイプの自己啓発本やと思ったんですよ。

本読んだだけで部屋片付くほど人生って簡単じゃなくない?とか思って猜疑心100パーやったんですけど、本として面白かったですね。


この本は整理整頓術という実用面よりも、なぜだらしない生活を過ごしてしまうのか、

という心理的アプローチが多い。実際にだらしない人の経験を元に、いろんなパターンを紹介してます。


この本、めちゃくちゃ正論で煽ってくるんですよね。ずっとぐうの音が出ない感じで丸め込まれるんですよ。

1番刺さった部分引用しますね。


システムや日課

 冗談じゃない。毎日決まったことをするなんて、退屈でやってられないね。システムだって、どうやって作るんだ!」。そう思う人もいるだろう。日課で人生が退屈になりそうな気がする人は、ちょっと考えてみてほしい。あわてふためいて鍵や所得税申告書を捜すことが、実際、そんなにおもしろいことなのか。汚れていない服はないかと物色することに、やりがいを感じられるとは思えない。

 

 

 

この本については一度ブログに書いてるのでもっと興味ある方はこちらをご覧ください。


http://nabelab00.hatenablog.com/entry/2019/06/23/145427

 

 

『しょぼい喫茶店の本』池田達


就活に失敗し、人生に行き詰まった大学生が、「しょぼい喫茶店」をやりたいとブログに書き、有名な人に発見されてブログがSNSで話題になり、見ず知らずの人から100万円もらい、感動した女性が「手伝いたい」と上京→ふたりで「しょぼい喫茶店」をオープンし、ふたりは結婚…

という嘘みたいな実話です。


概要だけ見れば奇跡みたいな話ですが、実際は著者が何度も小さい行動を起こし、分析し、新しい行動に移すという段階を踏んできたことがわかります。

何者でもない自分を受け入れたうえで、できることをして、いろんな人を巻き込んでいくことの素晴らしさがわかる本です。

 

『新しい猫背の星』尼崎武

短歌の本は今年もたくさん読みましたが、単純に1番好きな歌が多かった本を一冊挙げておきます。


新鋭短歌シリーズの『新しい猫背の星』。サンプリング(本歌取り)の技法が多用されているんですが、私はサンプリングがめちゃくちゃ好みなんやと思います。

短歌からの引用ではなく、歌詞だったりキャッチコピーだったりと元ネタが多岐に渡っていて、私たちの日常からちょっとズレただけで一気に異質な世界観になるのが良いんだろうなと思いました。

共感できる短歌も多くて、「そうや私はこういう短歌が好きやったよな」って改めて思ったんですよね。


〈引用〉

この道はいつか来た道 ああそうだよ 進研ゼミでやったところだ


おはようからおやすみまでをライオンが おやすみからおはようまでおれが


この恋を不本意ながら終えた日の吹雪がすごい! 2013


ハリセンボンになったら ハリセンボンになったら 友達ひとり抱きしめられない


人一倍罪悪感がありながら赤信号を渡ることは渡る


疲れてる俺にやさしくしてあげたい 見て見ぬふりが下手になりたい


もう俺は今日から生まれ変わるのに昨日のことで怒られている


神さまが弾を抜いたと気づかずにロシアンルーレットを続けてる

 

 

 


【漫画ランキング】

「ブルーピリオド 」

ここ数年で好きな漫画が立て続けに完結し(君に届け、セトウツミ など)、これから何を楽しみにすれば…と思ってたんですが、昨年この漫画を知って以来、1番楽しみにしてます。11月に出た6巻で「受験編」が完結しました。


何にも本気になれなかったインテリヤンキーが東京藝大を目指すというストーリーですが、あまりに面白いので「これ受験受かったら終わるんかな…合格して藝大編になるか、落ちて浪人編になるんか、なんにせよ続いてくれ…」と思ってましたが、11月に出た6巻で主人公の合否が出ました。

読み始めるなら今がチャンスです!ぜひ!!


これも一度ブログにしてます。


‪創作してる人みんな読んでくれ『ブルーピリオド』 - なべとびすこのなすべきこと

http://nabelab00.hatenablog.com/entry/2018/12/19/232856

 

 

君に届け 番外編 運命の人』


完結してしまった『君に届け』ですが、主人公の友人、くるみちゃんを主人公にした新たなストーリーが始まりました!

この漫画のすごいところは、同じ作者の『CRAZY  FOR YOU』の赤星というキャラクターが出てくるところです。

赤星は、少女漫画でよくある「主人公の女を好きになるめちゃくちゃいいやつやけど、絶対に主人公とうまくいかんやつ」です。

花より団子の花沢類の枠です。

読者全員「牧野つくしはどうせ道明寺とくっつくんやろ」と思いながらも「いや道明寺より花沢類のほうがええけどな」と思って見るやつです。

言うたら赤星って「噛ませ犬」枠なんですよ。


そんな赤星が15年(漫画ではなく実際の時間軸)のときを超えて漫画に登場し、

君に届け」に出てくる

「主人公とくっつく男のことをずっと好きな可愛い女の子で、最初のほうに主人公にめちゃくちゃ嫌がらせしたのち、改心して友達になったりするけど、結局好きな男とは絶対結ばれへん女の子枠」

のくるみちゃんの「運命の人」になるわけですね…。


君に届けのくるみちゃんの描かれ方は、よくある「嫌な女を経ての主人公の友達枠」に見えます。


ただ、25巻くらいまで読んだ人にはわかると思いますが、くるみちゃんは最初に自分がしてしまった悪事を本気で反省し、悪いことをしてしまった主人公に本気で謝れるような良い子なんですよ…

この『君に届け』25巻が、私が人生で読んだ漫画のなかで1番泣いたシーンです。


もはやこれを読んでしまうと、「ドラゴンボールのピッコロとかベジータとか許されてる感じあるけど、お前ら地球人めちゃくちゃ殺したくせに正義側の顔すんな」って思いますね。誠意を持った謝罪というのはそんな簡単なもんじゃないぞ、と思います。


ってことでそんなくるみちゃんの新しい恋愛をみんなで見守ってあげましょう。

まだ1巻しか出てないので今後も楽しみです。

 

 

「ミステリと言う勿れ」

去年から激推ししている「ミステリと言う勿れ」。

超大作の「7SEEDS」完結直後に発売された田村由美先生の新作です。


1→2巻にかけての事件が面白すぎた(2回目読むと伏線も効いてて最高)反面、3→4→5の序盤にかけての事件が難しくてちょっと怯んじゃったけど、途中からまた面白くなりました。


3巻の

「子どもは馬鹿じゃないです

自分が子供の頃バカでしたか?」


っていう台詞にはハッとさせられましたね…。

相変わらずの名言連発で、古い価値観に一石どころか何石も投じてくれてて良いですね。


以上です。

 


2020年から再就職により電車通勤になり、めちゃくちゃ本が読めるようになりました。

積んでる本をどんどん読んでいこうと思います。

 


【まとめ】

2019年読んでよかった本

『ナナメの夕暮れ』若林正恭

コンビニ人間村田沙耶香

『みらいめがね』荻上チキ

『だから片づかない。なのに時間がない。「だらしない自分」を変える7つのステップ』マリリン・ポール

『しょぼい喫茶店の本』池田達也

『新しい猫背の星』尼崎武


漫画

「ブルーピリオド 」

君に届け 番外編 運命の人」

「ミステリと言う勿れ」