なべとびすこのなすべきこと

やってみたいをやってみよう。短歌を中心にいろんなことをやっている歌人のブログ。

一歌談欒 vol.1 「具体的には日焼け止め」

おめんとか
具体的には日焼け止め
へやをでることはなにかつけること
(今橋愛)

.原井さんの「一歌談欒」企画に寄せるブログです。(概要はこちら→http://dottoharai.hatenablog.com/entry/2016/10/10/233037
ひとつの課題短歌に対して、みんなが解釈や感想を書くという企画。
1つの歌のいろんな解釈が聞きたい、という思いは私も強かったので、タイトル考案など、裏でいろいろ手伝わせていただきました。

本題、この歌について。

部屋を出る=人前に出る際 私たちはたとえて言うなら「おめん」、具体的に言えば「日焼け止め」をつけて生きている、というような内容。

いいなと思うのはやっぱり具体例が「日焼け止め」であるところだと思う。音数的には、「具体的には化粧品」でも当てはまるけど、これだと急に台無しになる。
化粧の場合は「着飾る」「自分をよく見せる」「欠点を隠す(しわ、たるみ等)」など、さまざまな効果が含まれてしまう。しかも、化粧は男の人は共感しづらいかもしれないし、周りから「つけている」ことがわかるっていうのも特徴だと思う。
おめんから連想するのは通常、化粧のほうなんじゃないかと思う。顔を隠して、別の顔をつける。それも「部屋を出る」際には必要なことだ。

化粧に比べて日焼け止めは「日に焼けることを防ぐ」という一点のみの効能だ。攻撃ではなく防御、加点ではなく減点を最小限にとどめる感じが日焼け止めにはある。しかも、周りから日焼け止めをつけてることはわからない。
日焼け止めは具体的には「日に焼けることを防ぐもの」、逆にこの「日」っていうのを抽象的にひらけば、「眩しいもの」「力のあるもの」にならないだろうか。
日に焼けて黒くなるのは、眩しいものに染まって、自分の色が変わることとも取れる。
日が世界なのか、身近にいる明るい人なのかはわからないが、そのままの自分でいれば自分の色が変わってしまう。それを防ぐのは日焼け止めだ。だから部屋を出る際には、日焼け止めをつける。日焼け止めも万能じゃないから、あまりに日が強い時はどうしても色が変わる。でも、少しでも自分の色を守るためには日焼け止めが必要だ。

着飾るのでも、隠すのでもなく、日焼け止めで、守る。
そうしながら部屋を出るのは、ある意味「日に焼けても別にいいわ」って言って何もつけずにありのままで行く以上に気高い行為にも思える。