なべとびすこのなすべきこと

やってみたいをやってみよう。短歌を中心にいろんなことをやっている歌人のブログ。

2018年読んでよかった本まとめ

大学生の頃から、毎年年末に、良かった本の振り返りをしていました。

もともとmixiで始めて、途中からTwitterでやって、そのあとFacebookに移ってたんですけど、あとから読み返しやすいかなあと思って、今回はブログで書きます。

ちなみに、私のこのオススメ本紹介は「鍋の紹介が面白そうすぎてハードル上がったせいで、本自体はあんまり面白くなかった」と言われることが非常に多いので、話半分で読んでください。

 

ただ、本の振り返りを始めてから最も本を読めない1年でした。

ピーク時は年に100冊近く読んでたんですが、自転車通勤になって、視力もハードコンタクトじゃないと出なくなって(※円錐角膜という角膜が尖ってる病気。ハードコンタクトつければ視力が出るけど、アレルギーがあってつけられない時期が多いのと正直つけるのが面倒くさい)、どんどん読めなくなってしまいました。


でもハードコンタクトつけりゃ読めますからね。今年は読みます。

ということで、数は少ないですが2018年良かった本と漫画を書いていきます。

 

『地球はココです。私はコレです。』滝沢カレン

 

前も書きましたが滝沢カレンが好きで、去年の2月はこの本のお渡し会のために東京に行きました。

滝沢カレンとツーショット写真を撮れるっていうことだったんですが、「応援してます」って言ったら初対面やのに「こちらこそ!」って言われてめちゃくちゃ面白かったです。)


この本は一応「滝沢カレンのスタイルブック」という体裁なんですが、ファッションや化粧だけでなく、レシピや横澤夏子さんとの対談など、いろんな滝沢カレンが詰まった本になっています。

滝沢カレンはよく「変な日本語」として、紹介されるのですが、滝沢カレンには確固たる文体があるんですよね。それは「変」なんて言葉で表して良いレベルじゃないと思っていて、この本ではその文章がたくさん読めます。

特にオススメなのはファッションコーデのページがで、滝沢カレンが自分のコーデの説明をしてるんですがめちゃくちゃ面白いです。

なぜかオススメ度を

・水族館デート

・女子会ディナー

・10年ぶりの友人との再開

・冒険

という4項目で解説していて、ただのデートではなく「水族館デート」だったり、友達と〜でなく「10年ぶりの友人との再開」という謎の縛りがあるため、解説がこの縛りに影響されてしまうんですね。

 

例えば、水色のシャツとデニム、水色のバッグとパンプスにサングラスのコーディネートの説明は

 

これは誰がどう見ても水族館デートに行ってください。全てをしっかり魚の気持ちも考えてなおかつ水に似合いすぎないように明るい空系の水色を入れることで大自然に大賛成していることを彼らにも見せられます。魚がしっかりと主役でありながらも水族館のある意味までも、しっかり服で言えます。水族館は室内&暗闇でやっています。サングラスはあくまで脇役です。室内に入ったら急いで外してください。

と書かれています。

滝沢カレンの特徴は「全方位に気遣いする」ところで、「魚の気持ちも考えて」の部分で象徴されるように、魚目線、水族館目線が存在するところがポイントですね。

また「水族館は室内&暗闇でやっています」という文章も、水族館に行ったことのない人、水族館がどういうものか知らない方に気遣った説明文となっています。

そして「サングラスはあくまで脇役です。室内に入ったら急いで外してください。」これも、滝沢カレンのコーディネートを真似して、サングラスのまま水族館に入って暗闇で楽しめない人がいてはいけない、という気遣いが感じられますね。

という感じで、滝沢カレンの一文一文に能動的に楽しむ気概がある方はめちゃくちゃ楽しめると思います。

 

10年以上の久々に会う友達には最適なコーディネートです。顔がいくら成長していようが、この人目を塞ぎたくなるほどの強烈な黄色が待ち合わせ時の相手への目印となります。黄色の服を着ているとだけ当日の待ち合わせ前に連絡を入れといてさえくれれば10年以上ぶりの再会も気まずくありません。

こちらも、10年以上会っていない=忘れられている場合のことも考えた内容になっています。

そういう感じで、いろんな文章を楽しみながら読み進めていくと、最後にめちゃくちゃ泣くことになりました。最後は、滝沢カレンが家族に向けて綴った文章が書かれています。

母子家庭で、母はずっと働いていたため、主に祖父母に育てられた滝沢カレンが、数年前に亡くなってしまった祖父、祖母のこと。祖父母が死んで、2人で頑張ろうというタイミングで癌が見つかってしまった母のこと。

滝沢カレンの文体は、文法的な間違いも込みで滝沢カレンの文体だと思ってるんですが、最後の家族に向けて綴られた文章だけは、いつもの間違いは見当たらず、きっと何度も何度も書き直したんじゃないかな、と感じました。

スタイルブックの撮影が始まった頃に母の癌が見つかったらしく、中止も考えたけど、母に喜んでもらうためにこの本を作ったということなども書かれていました。

それを考えて読み返すと、スタイルブックにしては盛りだくさんすぎるくらいの内容が、全て母へのプレゼントなんだと思えて、本当に感動しました。良い本ですよ。

 

ちなみに同時期に発売されたカレンダーも好きですよ。 

(個人的には本の方がオススメ)

 

 

『ミステリと言う勿れ』①〜③巻(未完)

大好きな漫画、『7SEEDS』の作者、田村由美さんの新作漫画です。まだ未完ですが、1巻からめちゃくちゃ面白いです。

理屈っぽい男子大学生が、いろんな事件に巻き込まれながら、独自の理論を展開しつつ解決するような漫画です。タイトルにあるように、事件は起きるんですが、「ミステリ」と言っても、トリック的なものより、心理的な部分がメインになっています。

1巻から2巻のバスジャックの事件がめちゃくちゃ面白いんですが、 真相がわかってから読み返すと、心理的な伏線が読み取れて楽しいです。「この人はこういう過去があったから、こんな反応なんや」「この人はこういう思考やからこう言ったんや」みたいな感じです。

そして魅力は、主人公が名言を連発するところです。従来の日本的な価値観へのコメントがかなり刺さります。男女ともに、共感する部分や考えさせられるところもとても多いんじゃないかと思います。

 

 

『ブルーピリオド』①〜③巻(未完)

成績優秀でコミュニケーション能力も高いヤンキーが、絵を描く喜びに目覚めて美大を目指す、というストーリーの漫画です。

絵以外にも何かしら創作やってたら響くであろうセリフやエピソードが多いので、めちゃくちゃオススメです。

 

前にブログでもう少し詳しく書いたので、興味ある方はこちらを読んでください。

nabelab00.hatenablog.com

 

 

 

『ネコの手も貸したい』及川眠子

残酷な天使のテーゼ」や「淋しい熱帯魚」など、有名曲を多数手がけた作詞家、及川眠子さんの作詞術について書かれた本です。

昨年、アポロ短歌堂で作詞をすることになって、天野慶さんに勧められて読みました。これまで短歌の入門書は読んだことがあったんですが、作詞に関する本は初めてでした。

短歌にも共通するテクニックが多数あって、非常に勉強になりました。例えば、音符の数に合わせて作詞する場合、類語辞典を使う、みたいな話は、まさに短歌でもやることですよね。

実際の歌詞を例にあげながら解説があるのでわかりやすいです。

 

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田 菜々子 

 

内容はタイトル通りで、出会い系サイトで会った方に本をすすめた方のエッセイになっています。作者は、夫と住んでいた家を出て、自分の人生を

狭い人生……。

もっと知らない世界を知りたい。

広い世界に出て、新しい自分になって、元気になりたい。

と振り返ります。

そして、出会い系サイト(と言ってもいかがわしいものというよりは、空き時間のマッチングサービスっぽいもの)に登録して、いろんな人と会って話をしながら、変わった人、怖い人も含めて、世界にはいろんな人がいることを再確認する、という内容でした。

実際、同じ会社で働いていて、同じ家に帰る生活だと、世界はどんどん閉じていくんだろうな、という感じがあって、その中で悩んでいることも、違う世界では大したことじゃないのかもしれないと思います。

 

 


『ゲイだけど質問ある?』鈴掛 真 

ゲイであることを公表している歌人の鈴掛真さんが、みんなが抱くゲイを含むLGBTへの疑問に、実体験をまじえながら答えています。

非常にやわらかい文章で書いているのですが、内容は非常に大切なことだと思います。当たり前ですが、ゲイに限らず、どんなパーソナリティの人間とも「ひとりの人間」として向き合うことが必要なんだなと改めて感じました。

 

 

『ドラマ』ナタカ

去年は私家版歌集をいくつか読んでいて、その中で1番好きだったのがナタカさんの『ドラマ』でした。

utanataka.booth.pm

 

ナタカさんの短歌は元々好きだったんですが、やっぱり歌集としてまとめて読むと、その人の良さが改めて感じられて良いですね。

 

好きな歌を挙げておきます。

 

アジフライやっぱり買えば良かったなアジの分だけ袋が軽い

 

迷って選ばなかった選択肢のことを、帰りにちゃんと思い出せる誠実さに惹かれますね。こんなに重いならお茶は明日でよかった…とかはよくあるけど、買わなかった分が軽いって感覚は意外と書けない気がします。

 

自転車に乗れた頃にはもうみんなキックボードで橋の向こうだ

 

私の周りでキックボード乗ってる友達はイケてる感じの人だったので共感度が高い。キックボードが流行ったのは結構ピンポイントな気がするので、世代感があって良いですね。

 

帰れなくならないように手加減をしながらめちゃくちゃに走り出す

 

どうにかめちゃくちゃになりたいけど、どうしても「我を忘れられない」感じというか、理性が効いてしまって、「めちゃくちゃに」って言いながら完全にはめちゃくちゃになれない感覚。はしゃげないし狂えないし踏み外せない感じですね。

 

現実は厳しいですね変身の間も敵の攻撃が来る

フィクションの定番と現実の比較。変身ポーズの間に攻撃しろよって子供の頃はよく思ってたけど、大人になってからはそれが「フィクションのなかの当然」だから何も感じなくなってしまっていて、ハッとしました。

他にもいろいろ好きな歌が多いんですが、紹介しきれないので、ぜひ読んでほしいです。

 

 そして、2018年はついに、漫画君に届けが完結しました!!全30巻。

もう何年も読んできた漫画なので、もはや親のような気持ちで見守ってきましたが、みんな自分の道を見つけられてよかったですね…。全ての思いが成就したわけではないけど、物語がスタートした時より、格段と成長したみんなの姿を見られて感無量ですね…。

 

ちなみに、くるみちゃんはこのあとの別マで特別編が公開されていて、その内容がめちゃくちゃよかったです。しかも同じ作者の過去作品『CRAZY FOY YOU』の世界とも繋がってくるという内容でした。こ『CRAZY FOY YOU』で報われなかったあの人が出てきます。

これ今後どっかでコミックスに入ったりするんかなあ…。 この番外編、1つ目しか読んでなかったんですが知らんうちに2つ目も公開されていたらしいので、いずれコミックスになると信じています。

 

ということで、2018年に読んでよかった本の振り返りでした。

今年はもう少したくさん本を読みたいです。