なべとびすこのなすべきこと

やってみたいをやってみよう。短歌を中心にいろんなことをやっている歌人のブログ。

平出奔さんとの「いちごつみ短歌100」

短歌界のTwitterでよく遊ばれている「いちごつみ」を平出奔(ひらいでほん)さんと行いました!

 

平出奔さんTwitter

twitter.com

 

その前に「いちごつみ」とは…

前の歌から「一語」を摘みとってその一語を自分の歌に入れて詠む。返歌ではない。

というルールです。千原こはぎさんのブログに遊び方なども詳しく掲載されているので、ぜひ挑戦してみてください。

kohagi-orz.jugem.jp

 

以下、100首掲載しておきます。

 

奇数の作者が平出奔さん、偶数の作者がなべとびすこです)

 

 

1.キャベツから鎮痛剤の味がした。食べて痛みとわかった、あれが。

 

2.飲み込んだ鎮痛剤が効いてきて君の痛みも忘れてしまう

 

3.街中を飲み込んだあのサイレンは結局あなたのおなかだった、の?

 

4. サイレンが鳴らない夜に家にいる君にも会いにいかずに座る

 

5.家にいるときだけ纏っているオーラ:肌に優しい、戦闘力2

 

6. 戦闘力低めの雑魚にも人生があるとわかって誰も殴れない

 

7. ニンゲン三原則のため殴れない我らが主ロボット様を

 

8. 自転車の三原則は足で漕ぐ/視界を保つ/風に乗ること

 

9. 風に乗るようにあなたが歩いてたのをおぼえてる渋谷スクランブル

 

10. 渋谷でも誰かを見つけられるのは奇跡みたいだって顔顔顔顔

 

11. 奇跡だね今日も死体を食べている僕らがまだ生き物なこと

 

12. 夜に目を閉じて記憶を飛ばすのは死体になるためのリハーサル

 

13. 真っ白なワンピースがあのときだけ赤く見えた屋上の記憶

 

14. 屋上が封鎖されてる 青春の葬儀を済ませた学校だろう

 

15. 表彰式なんですかこれ? めでたげな僕の葬儀かと思いましたよ。

 

16. 「表彰台、下から見るか?」「それ以外ほかに答えはあるんですかね?」

 

17. 「それ以外だったらいいよ」と僕を指さしたあの子にあげた偽札

 

18.偽札を作るドラマを見る 君の義理チョコを本命に変えたい

 

19. 水10のドラマに出てる原口の特技は今でも変わらぬようだ

 

20. 水10は綾瀬はるかのための枠 優先座席は老人の枠

 

21. 僕も血は赤いし腸はうごめいてる 綾瀬はるかと八割同じだ

 

22. 八割の人が残した給食の小さいおかずのおかわりをする

 

23. 給食でたまに食べてたカリカリのサラダに入っていた喉仏

 

24. とりあえずシーザーサラダを頼もうか、とりあえずとか要らないのにね

 

25. ブルースカイ、お前もか! 夏、裏切られ僕はジュリアス・シーザーばりに

 

26. 泣いているかもしれないな君は今マリッジブルースカイの下で

 

27.そうなれば校舎は瓦礫 僕ひとり机の下でじっと待ってる

 

28. すみやかに机の下に隠れなさい自分のために泣いてもいいよ

 

29. 可及的すみやかに夜よ訪れてわたしの身体を黒くしなさい

 

30. 火を消した跡だけ黒く留まってオレンジ色の火花は逃げた

 

31. ああこれで僕の勝利だ祝福のように視界に舞い散る火花

 

32.アイドルが派手な衣装で踊り咲く司会のタモリの視界は暗く

 

33. 地下室で陰謀論を叫んでた田口が推してる地上アイドル

 

34. 田口さん人生で何個口の字を書いたんスかねぇって森くん

 

35. 「沈黙の森」って感じの森の中ゴブリン気分でかざしたナイフ

 

36. サバイバルナイフを買った少年の校舎に敵はどれだけいたか

 

37. 前日に買った駄菓子を供えれば心なしか笑む兄の遺影

 

38. 遠足の前にみんなは駄菓子屋へ僕はひとりでスーパーに行く

 

39. 暗い森揺らす熱風つないだ手 ふたりぼっちの永い遠足

 

40.室外機 熱風吐いて呻いてる助けを呼ぶかのように震えて

 

41. 「呻いてる牛が一頭道に居て、なんか、神って感じでしたね」

 

42. 感じ悪い店員がほかの店員と感じ良い笑顔で話してたとき

 

43. アリジゴク見つけ笑顔で中指を立てた 巨大化する夢を見た

 

44. キノコとか食べても巨大化できなくて等身大でクリアするだけ

 

45. 雑草と言うならこれは雑菌か キノコ、食ったら逝けるだろうか?

 

46. 雑菌を拡大するな目に見えるものに恐怖を優先させろ

 

47. 拡大しても拡大しても中央のあなたはのっぺらぼうでかわいい

 

48. 脳内でのっぺらぼうに書き換えた 口の動きが見えないように

 

49. 隣席で揺れるこいつの脳内に直接流してあげたいメタル

 

50. 火は揺れる水は流れる木は歌う君は手を振る僕は振られる

 

51. 手を振るとそこでも風は産まれてて遠くあなたの髪も揺らせる

 

52. 遠くから呼ばれた気がして振り向いたなんだ神様かよ黙ってて

 

53. 急がずにそっと歩いて来なさいと新品の墓石に呼ばれた

 

54. 新品の人間を抱くまだ傷も汚れも歴史もない肌だった

 

55. 校庭の隅に植わったくぬぎの木の歴史が必修科目の学校

 

56. あいさつは必修科目赤点を取った僕だけ大人になれない

 

57. Rって書くとき左右逆にする 僕は大人になりたくないの

 

58. イヤフォンのRのほうだけ突っ込んでLに世界の愛を注いで

 

59. 大は小を兼ねるが家訓 僕のLサイズを着たまま眠る曾祖母

 

60. 絶望のXXLサイズハッピーセットは幸せが付く

 

61. 免許証入りの財布は川の底 僕の名前はXX

 

62. 免許証/鏡の中の顔/盛れるアプリで撮られた顔、全部オレ

 

63. 「これでどうですか?」と問われ目を開ければ鏡の中で笑う生首

 

64. 問われたら全部はいって言いなさい嘘発見器はオフにするから

 

65. きみが嘘発見器なの? なるほどな。汗舐めるの好きだったもんなあ

 

66.なるほどなうさぎはとぶから鳥ですか。記憶もとぶから鳥でいいです?

 

67. うさぎさんそっちでいいの? 真っ白な道に真っ赤な跡があるけど

 

68.跡を濁すのを許してねさよならを噛んだことまで覚えておいて

 

69. 爪噛んだ足に気付いた君だからよごれた裏でも見てほしいんだ

 

70. 空一面汚れたような雲を撒く夜でも星に気付かぬように

 

71. 一面の一番はじめのクリボーにそろそろ顔をおぼえてほしい

 

72. クリボーの遺影を飾るいつどこで殺したやつかもわからないけど

 

73. 遺影だと思って必死に笑ってる 笑顔で生きてたことにしてたい

 

74. 必死こいて走った50メートル走「手抜くのダサいよ」と言われる

 

75. ダサいバンドTシャツ着てるこの街で独りの僕を見つけてほしくて

 

76. でかい音鳴らして汗をかけばいいロックバンドのライブのように

 

77. ああ、花火 やたらとでかい音がしてようやく気付けてしまいさみしい

 

78. 昨日なら花火が埋めていた空に月すらなくてなんでも描ける

 

79. 埋めていたはずの桜の木の下で彼らはすべて忘れて笑った

 

80. 忘れてよそんな昔の話とか笑いあってた夏のこととか

 

81. 川沿いで笑いあってた毎日もあった気がする さよなら、先生

 

82. 青春の象徴としての川沿いを老年のホームレスが歩いて

 

83. 人類最後のホームレスが死ぬ間際つくったとても綺麗な泥団子

 

84. 人類にさよなら告げるヒット曲から30年まだ生きている

 

85. あと30年は元気でいられるよ いま飲み込んだきみの唾液で

 

86. 元気かな、問いかけることができなくてFacebookに名前を入れる

 

87. Facebookが友達の友達として突きつけるいじめ現場を

 

88. 犯人はいずれ現場に戻るって嘘だろ君は戻ってこない

 

89. 主人公気取りで家に火を放ち正義の犯人になった僕たち

 

90. 「正義なら処方しておきました」「その副作用が出てるんですよね」

 

91. 副作用特にないけど星空が綺麗に見えなくなっちゃう薬

 

92. 都会では夜空はnot星空で脳で星座を投影できる

 

93. 比較的都会ですよねニトリとかマツモトキヨシとかありますし

 

94. 初夢は一富士ニトリサンガリア平成終わるしチェンジザワールド

 

95. わたくしを富士の樹海でつかまえて あなたのなりたいものを教えて?

 

96. 樹海には未練が投棄されていて拾ってくれるのを待っている

 

97. 未練とかじゃなくて僕が僕だった記録にしたい峠の写真

 

98. 記憶にも記録にも残らない日々ぼやぼやした感情だけがある

 

99. 夏の日々、勉強部屋は飛び出してスイカの味の恋をしましょう

 

100. 種のないスイカは風情がないように君にホクロは必要だから

 

 

以上です。

平出奔さんありがとうございました!