寝る前に脳内マジカルバナナやってる話
私はあんまり寝つきが良くないタイプで、そのうえ、最近の暑さで眠れない夜が続いていた。
しかも私は寝る前に脳内反省会をすることが多くて、あのときああ言わなければよかったとか、理不尽なことを言われたけどさすがに言い返せばよかったとか、あの言い方は無いわ、とか、自分に対する反省や他人のイライラを繰り返して眠れなくなる。
イライラしたり怒ってたりしたらもうそれで頭がいっぱいで眠れない。
そんなとき、Twitterですぐに寝れるコツをツイートしてる人がいた。
元ネタは調べたら何個かあって、それが回ってるっぽい。
これまで散々眠れない人のためのコツ、みたいなネットの記事を読んできて全く効果が無かったが、私はこれで数日はリラックスして眠れた。
ただ、数日続けると、けっこう飽きてきた。
というよりも、毎回「あ」から始めてやっていくと、同じ単語が出てきて、自分の語彙力の無さにがっかりし始めてきた。
目的はスムーズに眠ることなので語彙力のなさに落ち込む必要は全くないが、一応は「歌人」として活動してるので、わりと本気で凹んでしまった。
このシャッフル睡眠法のキモは
人間は論理的に考えている時は眠れない。
ということらしいが、そんなことはもうどうでもよくなっていた。
ゲームに夢中になることで、悩みを脳内でリピートする癖を消す方が自分のために良いし、そのために脳内でゲームをするのは自分に向いてる解決法だと思った。
そこから毎日頭の中でなにかやるようにして、少しの間はしりとりをしてた。
ただ、これも一人でやると同じ語彙が出てきてしまって、悩みの解決にはならなかった。
この辺りで眠れるかどうかではなく、「眠る前に自分の語彙をどれだけ引き出せるか」が重要になっていた。
しりとりの後はマジカルバナナをやるようになった。
元の「人間は論理的に考えている時は眠れない。」を完全に無視して、論理で連想を繋げ始めていた。
そのときに、この動画を見つけた。
最近毎日見てる東大クイズ研究会 Quizknockさんの動画。
オリジナルの遊びや、ふつうのしりとりであっても縛り要素を入れてインテリにしかできない動画をたくさん作ってる最高のチャンネル(マジで面白いのでみんな見てほしい)。
この「マジカルキノコ」は「逆マジカルバナナ」。
マジカルバナナは連想する単語を続けていくが(バナナと言ったら黄色)、マジカルキノコでは関係のない単語を言わなければならない。
動画の最初の例で言うと、
「キノコと言わずに赤色」だと、ほかの人が「赤いキノコ(カエンダケ)がある」と関係性を指摘することで、指摘した人にポイントが入る、というルール。
(マジカルバナナは「Aと言ったらB」と言うが、マジカルキノコでは「Aと言わずにB」と言う)
ここで、一旦最初の「人間は論理的に考えている時は眠れない。」を思い出して、マジカルバナナよりマジカルキノコのほうが寝るのに向いてるはず!と思って、見た日の夜から早速やり始めた。
ただ、これをひとりでやるとめちゃくちゃ難しい。
ひとりでやってるからなおさら、1つの単語から芋づる式に記憶や知識が引っ張られ、けっこうな確率で、連想する単語を言ってしまう。
(ひとりでやってるので指摘も自分自身でやることになるのでめちゃくちゃ忙しいので、0.5倍速くらいでチャレンジするほうがいい)
そして、このゲームを極めることで、
短歌におけるいわゆる「つきすぎ」問題が解消されるかと思った。
「つきすぎ」とは、言葉の関係性が近すぎる、発想がありきたり、みたいなこと(のはず)。
花火の歌を詠んだときに、花火を花にたとえるのは、つきすぎな感じがする。だからと言って、突拍子もないことを言うと「はなれすぎ」みたいになるのでこのゲームの練習がどこまで有効かはわからないが、
私はこの「つきすぎ」な歌を作りがちなので、関係性の遠いものをポンポン言えるようになるのは短歌のために良いかなと思った。
ただ、このゲームには必勝法的なものがないことはない。
関係のないことで繋げてるので、
Aと言わずにB、と言うことはBとAは関係がないので、CにはAに近い単語を言えばいい。
キノコと言わずにベンチ→
ベンチと言わずにタケノコ
なら、
キノコとタケノコは関係があっても、ベンチとタケノコに関係はない。
これを繰り返すと、
キノコ→ベンチ→タケノコ→高層ビル→竹→エレベーター
みたいな感じで続けられる。(山、自然っぽいものと町、街っぽいものの繰り返し)
ただ、1つ前の単語を思い出しながら続けるので変な難しさがあるし、何回も書くけどひとりでやってるのでめちゃくちゃ忙しい。
あと、
エレベーターと言わずに地球
などと言ってしまうと、大抵のものが地球と関連するので、もう発想を宇宙に飛ばすしかなくなるし、
地球→宇宙なら、地球は宇宙のなかにあるからアウト、になってしまうので、ひとりでやるときは「大きい単語を使わない」のもコツになる。
(対戦相手がいればこのやり方は有効だと思う)
それで何日か繰り返してたところ、より必勝法に近いものが出てきた。
単語的に似ていたり、韻を踏むことに注力すると、関係性が「言葉」に集約するので、脳はキノコを概念じゃなく、3文字の言葉として捉え始めるっぽい。
これは私がなぜ「韻」が好きか、みたいなところにつながってくると思う。
韻を踏みたいがゆえに、普通なら歌詞に使わないような単語が出始めることがある。
たとえば、KICK THE CAN CREWの「千%」のKREVAのバースには、
恋は一秒もかからずに燃えるけど
心にはないぜ追い炊き機能
(さぁ今すぐに)もっと薪をくべろ
(回せ回せ)世界を巻き込むベロ
という歌詞がある。
やっぱり注目すべきは「追い炊き機能」で、これは「恋は一秒」の部分と全く同じ母音(おいあいいおう)になっている。
しかも、「追い炊き機能」(風呂)からの連想で「薪(まき)をくべろ」が出てきて、この「薪をくべろ」と「巻き込むベロ」も韻を踏んでる。
韻と連想が絡まった最高の歌詞だと思う。
「韻」に注目するとそういう単語を出せるようになる。
KREVAで言うと、この前「音楽の日」で歌ってた「イッサイガッサイ」なんか、夏の名曲で最高なんですが
当社比2倍 後悔しないよう楽しんだ分だけ今日は短い
みたいな歌詞があって、これも「当社比2倍」「後悔しない」「今日は短い」が同じ韻になっていて、
「当社比2倍」という単語が恋の曲に突然現れて引っかかりになっているのが良い。
(この曲めっちゃ聞いてたのにこの部分の韻に気付けてなかった)
話は戻ってマジカルキノコでは、韻に注目するとやりやすい。
さらに、しりとりのほうがもっとやりやすい。
キノコと言わずにコアラ、コアラと言わずにランドセル、ランドセルと言わずにルーレット
みたいな感じでわりと簡単に関係性のない言葉を呼び出せるだろう。
韻よりも手軽な分、ひとりで遊ぶには簡単すぎてつまらなくなるかもしれない。
ただ、そんな中でも人間は共通点を見つけてしまう生き物だ。
トイレと言わずに冷凍、
なら、普通はトイレと冷凍に関係性を見つけられないかもしれないが、私は人生で1番好きな回文が「冷凍トイレ」なので、完全にこれに引っ張られてることが自分でわかってしまう。
ほかにも、しりとりとか韻も無視して、
キノコと言わずにペンチ
なら、
ペンチで抜くネジの形がキノコに似ていることに気づいてしまう。
そのとき、ゲームとしては負けるが、
ペンチでキノコを抜く、みたいな短歌を作れば、
「そういえばキノコとネジって似てるよなあ」という驚きを呼べるだろう、と考えて、
命など容易に終わる山のなかキノコをペンチで抜こうとしたら
みたいな短歌を詠み始める。
(この歌が良いかどうかは置いといて)
キノコとネジならわかりやすいが、キノコとペンチくらいならつきすぎではないはず(正直「つきすぎ」の概念がそこまでわかっていない)
ということを毎日やり始めたら、
寝る前にその思いつきをスマートフォンのメモ帳に書くことになって、しかも短歌まで詠みはじめたりするので結局寝れなくなった。
とか書いたらオチっぽいけど、正直言って短歌を詠む前に寝てしまうことが多い。
脳内反省会よりは有意義だし、たぶん短歌にもつながるし、韻やしりとりの瞬発力も上がるので、マジカルキノコぜひやってみてください。